ヴォイストレーニングはコーチングそのものだった

ヴォイストレーニングはコーチングそのものだった

以前に書いたことがあると思いますが、私は20代の間、10年間ヴォイストレーナーをやっていました。
20歳になった次の月に始めて、30歳と4ヶ月で辞めたので本当に丸々10年間でした。

ヴォイストレーナーというのはヴォイストレーニングを教える人です。
よく「カラオケの先生ですか?」と聞かれましたが、少し違っていて一般的にヴォイストレーナーは発声技術を教えます。人によって違うのでしょうが、私自身は歌そのものを教えることはそれほど多くはありませんでした。

生徒さんはプロを目指す人やアマチュアでもかなり真剣に歌をやっている人が中心でした。
最初の4年間は自分が学んでいた先生のスクールで教え、後半の6年間は自分でスクールを開いて教えていました。
生徒さんが歌っているジャンルはポップスやロックが中心で、時々ジャズやシャンソンなどを歌っている方もいました。

その当時から自覚はありましたが、今思うとあの10年間は毎日がコーチングでした。
基本的に個人レッスンが中心なので、学びに来てくれる生徒さんの発声はもちろん、メンタルや体調のケアなど、幅広い分野で相談に乗ったりしていました。
週に一度のレッスン以外の個人練習は生徒さん自身の責任。
ゴールを持ってもらって、それを実現するための方法を一緒に考える日々でした。

毎日一生懸命やっていて充実していましたが、今になって思うとずいぶん思い切ったことをやっていたものだとも思います。
自分自身がまだ迷いながら生きている中で、「久野先生」と呼ばれてトレーニングやコーチングをしていたのですから。

もちろん自分にはまだ力がないことは分かっていましたから、いろんな人の話を聞いたり、大量の本を読んだり、熱心に勉強してはいました(発声技術や歌には自信がありましたがコーチングをするための基礎はありませんでした)。
とはいえ、現実には追いついていなかったと思います。
「今ならもっといい形で力になれたのに」と時々思い出しては当時の生徒さん達に申し訳なく思うこともしばしばです。

もちろん過去についてくよくよしてエフィカシーを下げてしまっても仕方がないので、「かわりにこれから会う人達の役に立とう」と切り替えますが。

ただ、力不足だったとはいえ、本をたくさん読んで一生懸命勉強したことは大いに価値がありました。
日本ではまだ真新しかったコーチングですが、その面白さに目覚めたおかげで私の人生の幅が広がりました。

現在は本格的にコーチングを学んでいますが、20代で試行錯誤でやったことは決して無駄ではなかったと実感しています。