WHOのレポート:水道水の中の放射能

WHOのレポート:水道水の中の放射能

水道水の中の放射能について大変話題になっているので今日はそのことについて書きたいと思います。

東京都の金町浄水場で基準値を超える放射能が測定されて東京都が乳児に水道水をなるべく飲ませないようにと伝えたのが3月23日ですが、私はツイッターを通して下記のファイルを受信してその日のうちに内容を確認していました。
このレポートを始め、いくつかソースから私は水道の放射能は今のところ問題ないと判断したのですが、世の中は逆にミネラルウォーター買いだめに走る人がたくさんいて、東京都に至っては乳児がいる家庭に水を配る、などということを言い出してしまいました。

レポートはWHO(世界保険機構)が22日に出したもので、その時点で最新のものでした。

WHO report

ポイントはレポート中の12ページの最後から13ページの前半までの文章です。
下記に抜粋しましたので英語が読める方はぜひ読んでみて下さい。

引用開始

The Nuclear Safety Commission of Japan, a unit of the Government of Japan established the guideline value for restriction of intake of drinking water as:
I-131* 300Bq/kg
Cesium-134, -137* 200Bq/kg

* MHLW advised that materials exceeding 100 Bq/kg are not used in milk supplied for use in powdered baby formula or for direct drinking to baby

It should also be noted that the Japanese guideline value is an order lower than the internationally agreed Operational Intervention Levels (OIL’s) for I-131 (3,000 Bq/kg), Cs-134 (1,000 Bq/kg) and Cs-137 (2,000 Bq/kg). Iodine-131 is not a significant source of radiation because of its low specific activity (ref. IAEA General Safety Guide No. 2: (リンクが切れていたので省略)

引用終了

※MHLWは厚生労働省。Ministry of Health, Labour and Wellfare。
※Nuclear Safety Commissionは原子力安全委員会。

もうすでに皆さんかなり詳しくなっていると思うのですが、念のため復習させて頂くと、
I-131はヨウ素131のことで、Cesium-134, 137は読んだ通りセシウム134と137です。

上記の下線部で強調したように、まず日本の基準値であるI-131の300Bq(ベクレル)とCesium-134,137の200Bq(ベクレル)は国際基準:internationally agreed Operational Intervention Levels、より一桁低い値です。
“an order lower”という表現が「一桁低い」に当たると思って頂ければ結構です。
確かに国際基準ではヨウ素131が3,000Bq、セシウム134は1,000Bq、137は2,000Bqですので、一桁異なります。

数字についてまとめると下記のようになります。

ヨウ素131 : 300Bq(日本)< 3,000Bq(国際基準)
セシウム134: 200Bq(日本)< 1,000Bq(国際基準)
セシウム137: 200Bq(日本)< 2,000Bq(国際基準)

つまり、日本の方がかなり厳しいということです。
23日に金町浄水場で測定されたのが210ベクレルだったので、これは乳児の基準100ベクレルを超えるということで東京が大騒ぎになったわけですが、もうちょっと落ち着いて考えれば少しはましな展開になったのではないかと、私は思います。

もちろん、できれば乳児には飲ませないほうがいいというのは間違いではないでしょうし、それをアナウンスするのは悪いことではないですが、大人は大丈夫ということを合わせてしっかりと伝えることも極めて重要だったはずです。

国際基準が適切なのかという課題は常にあるので、単に日本の基準はかなり厳しいのだから心配する必要はないと簡単に言うことはできませんが、WHOから出ているレポートに触れて説明するだけで多くの人は合理的な判断をすることができるはずだったと思うのです。

WHOのレポートは内容的には専門的なもので必ずしも全ての人がきちんと理解する必要はありませんが、政治家や官僚はこのレベルの情報を押さえているべきだと思いますし、少なくとも手元には届いているはずなのですから、誰かがきちんと読んでそれを報告すれば混乱は避けられるはずでした。

しかしそれは恐らくなされず、読んだであろう官僚の報告はどこかで止まり、官房長官からは「これは念のための措置ですので」というかえって国民の不安を招くような発言が繰り返されることになったのです。

一方で、このレポートはツイッターを通じてかなり広範囲に広められていたはずなので、受け取った人が英語で内容を判断出来ていれば、慌てて水の買いだめに走るようなことは避けられたと思います。

その他に多数の情報が飛び交っていますが、総じて海外から入ってくる情報は客観的で、渦中にいる日本のメディアよりもよほどバランスを保っています。
こういった情報を直接読み取れている人が安定した精神状態で過ごし、社会にいい影響を及ぼしているように感じますので、今後もぜひそういった英語脳人材が増えていくように、私としてできる貢献をしたいと思っています。