未来に向けてフィードする
フィードバックの難しさについて前回、書きました。
どう難しいのかというと、その考え方自体が日本人の感性に合っていないと思うのです。
英語で”confront”という言葉があります。
直訳すると「向き合う」だと思います。
フィードバックは、この”confront”=「向き合う」という感覚が前提となっています。
日本人はこれが苦手だと思うのです。
厳しいフィードバックを受けると、人格が攻撃されたと感じて心を閉ざすか、明るく振る舞っているので心を閉ざして
いることを隠されているものの内面ではシャッターが下りている、このようになってしまうケースが日本人の場合には
少なくないようです。
仮にそこまででなくても、傷つきながら仕方なく相手の話を聞いているという場合も多いと思います。
本来、建設的な意見を投げかけるのはとても価値があります。
誰でも、自分がどのように見られているかは気にしていますし、周囲の意見に耳を傾けずに独りよがりになってしまう
ととんでもない失敗をする可能性もあります。
価値ある意見は聞いたほうがいいし、聞きたいのが本音でもあるのです。
では、どうしたらいいのでしょう?
「フィードバック」自体は価値が高いとしても、この言葉には「返す」という語感があるため、どうしても「対立関
係」を作ってしまうように感じます。
対立関係を想起させるような言葉はなかなか受け入れづらいものです。
そこで、私の提案ですが「フィードフォワード」という言葉はどうでしょうか?
未来に向けてコメントを返すというニュアンスです。
ご存知でしょうか、かつて上映された「ペイフォワード」というハリウッド映画があります。
主人公の少年が思いついた、「自分が受けた善意や思いやりを、その相手に返すのではなく、別の3人に渡すこと」で
世の中良くするという発想です。
映画のストーリー自体は私がここで書いてしまうよりも、ぜひご覧頂いた方が良いと思いますが、ここで私が使った
「フィードフォワード」という言葉のニュアンスは「未来に向けて」という意味で、この「ペイフォワード」に近いも
のです。
この記事を読んでくださっている方はご承知いただいているかもしれませんが、ゴールドビジョンは「未来に目を向け
ること」を重視する目標実現方法です。
そのため私は「未来を視る力」という言葉を作り、その力は
(1)ゴール設定
(2)ゴールの世界の臨場感を高める技術(アファメーションやビジュアライゼーション)
からなるものとして定義しています。
「フィードフォワード」は、まさに「未来を視る力」を高めるためにとても効果が高いコミュニケーション手法で、
「フィードフォワード」を受けた人は未来に向けてどのように改善していくのが望ましいかを考え始めるものです。
また、組織向けのコーポレートコーチングでは、自分と相手で共有できるポイントを見つけてゴール設定を行います。
これもまさに「フィードフォワード」の一例です。
自分のコメントによって相手の目線を未来に向けるからです。そしてそこには自分自身や組織のゴールも包摂されるよ
うにします。
相手の話をよく聞き、未来に向けて目を向けることができるようなコメントを返す、これが「フィードフォワード」で
す。
そこには、過去の問題点に関する厳しい指摘などは含まれません。
“confront”することが苦手な日本人には向いているコミュニケーション手法ではないかと思います。
私自身は、コーチングの現場ではいつも「フィードフォワード」をすることを基本と考えています。
これも、多くの日本人が「直言」を受け止めることが苦手だと、はっきりと自覚しているからです。
いかがでしょうか。